こんにちは、和花人のMIHOです。
冬の庭や鉢植えって、花が少ないぶん、どうしても少し寂しく感じることがありますよね。
そんな季節に、静かに彩りを添えてくれる存在が「一両・十両・百両・千両・万両」です。
正月の縁起もの、というイメージが強いかもしれませんが、実は今、とてもおしゃれな園芸品種が増えていて、
- 斑入りの葉
- 黒っぽいシックな葉色
- 赤だけじゃない、白や黄色の実
など、“選び方次第で雰囲気ががらっと変わる植物”なんです。
今日は、縁起にとらわれすぎず、でも日本の季節感は大切にしながら、私自身が「これ、好きだな」と思う品種を中心にご紹介しますね。
まず整理|一両〜万両って、それぞれ別の植物です

「千両と万両、同じでしょ?」って思われがちだけど、違います。
ざっくり言うとこんな感じ。
- 一両=アリドオシ(蟻通し)(正月の縁起合わせで「千両万両有り通し」にも)
- 十両=ヤブコウジ(藪柑子)
- 百両=カラタチバナ(唐橘)(百両金とも)
- 千両=センリョウ(葉の上に実が見える)
- 万両=マンリョウ(葉の下に実が垂れるようにつく)
この「実の見え方」の違いって、寄せ植えや鉢の“佇まい”にも直結するので、意外と大事です。
▼各植物の詳しい情報はこちらの記事をチェック

一両(アリドオシ)|“とげ”の緊張感が、逆にかっこいい
「蟻でも刺し貫く」説や「蟻しか通れない」説があるくらい、鋭い存在感です。
おしゃれ品種の狙い目
■ 白フクリン斑(白覆輪)系
深緑の葉に、ふわっとクリーム色の縁取り。
暗い日陰で“光る”タイプです。
ただし、斑入りのアリドオシは「実が付くか不明」「親木でも見たことがない」など、結実が読みにくいことがあります。
■ 白実(白い実がなる品種)
流通は稀だけど、“赤実の縁起木”が並ぶ中で、白実は本当に洗練されます。
和花人メモ(使い方)
アリドオシは「かわいい」より「凛」。
寄せ植えより、苔・石・古鉢に合わせたほうが、世界観が一気に締まります。
十両(ヤブコウジ)|“葉っぱで遊べる”古典園芸の沼
十両は、足元に広がるように育つ常緑低木です。
日陰のグランドカバーにもなるし、盆栽っぽくも仕立てられる万能選手。
そして十両の真骨頂は、斑入り・葉変わりの品種がとにかく豊富なこと。
古典園芸として、品種名が付いたものがたくさん流通しています(例:天ノ川、冠雪、黄金花など)。
【重要】「十両の斑入りは赤い実が生らない」問題
斑入りのヤブコウジは実がつきにくい傾向が知られています。
(花の時期に長雨で受粉しにくい、という話もあります)
だから十両を購入する際は注意してくださいね。
- 実を楽しみたい → 緑葉の実付き株
- 葉を楽しみたい → 斑入り・葉芸(実は期待しすぎない)
この“割り切り”を知ってるだけで、買い物の失敗が減ります。
おしゃれ十両の代表的な方向性
- 白覆輪・砂子斑・散り斑など「明るい斑」系
- 葉芸(チリメン・コンペなど)の質感系
古典植物のカタログでも多様な品種が挙げられています。
百両(カラタチバナ)|“百両金”の名にふさわしい、実と葉の完成度
百両(カラタチバナ)は、冬の赤い実が美しい常緑低木です。
江戸時代に斑入りが大流行し、百両単位で取引されたことから名がついた、という由来が有名です。
おしゃれ品種の狙い目
■ 白実(白い実)
赤実の縁起木が多い中、白実は“静かな高級感”。
シェードガーデンにも映えます。
■ 小判・鳳凰・竜(雲竜など)系の古典品種
「百両(金)」は、カラタチバナの古典園芸植物として、江戸時代から葉や実の色・形の変化で品種が選び出され、多くの名前が伝わっています。
たとえば「白実上巻鳳凰」「朝日」「出雲小判」「雲竜」「黄金小判」など、実の色や葉形の違いを楽しむ品種が古書や園芸資料に記録されています。
和花人メモ(使い方)
百両は、鉢の格で化けます。
黒釉・古信楽・鉄釉みたいな“重さのある鉢”に入れてみるのも素敵です。
千両(センリョウ)|黒葉・斑入りで「和モダン」に寄せる
千両は、実が葉の上に見えるから、写真でも映えます。
そして今どきおしゃれにするなら、千両は断然「葉」で選ぶのがオススメです。
オススメ品種
■ カラス葉千両「ダークショコラ」
新芽がチョコレート色〜黒紫っぽくなるタイプで、シェードガーデンの差し色が“渋い”。
商品説明でも「新芽が紫黒色」「実はややつきにくいことがある」とされていて、葉を主役に楽しむ発想が合います。
■ 斑入り千両
斑入り+赤い実の組み合わせは、正月だけじゃなく冬の寄せ植えにも強い。
和花人メモ(使い方)
黒葉千両は、合わせる花を増やすと急に“やりすぎ”になります。
相棒は、白・生成り・グレーグリーン(ヤブラン、苔、シダ、白い器)くらいで十分、映えると思います。
万両(マンリョウ)|「紅孔雀」と“実色違い”で、一気にプロっぽく
万両は、千両より丈が出やすく、実も長く楽しめる印象。
お正月の鉢物でも“主役”になりやすい子です。
オススメの品種
■ 万両「紅孔雀(べにくじゃく)」
これ、ほんとにおしゃれです!
新芽〜葉に赤み(紅紫っぽい斑)が入り、冬に赤い実がつく斑入り品種として紹介されています。
万両は「実色」で遊べる
赤実が定番ですが、白実(シロミノマンリョウ)、黄実(キミノマンリョウ)も流通しているので、
“紅白”にしたい人はここが近道。
MIHOちなみに「黄金万両」は生産者さんが少なく、実色が安定しにくいこともあり、毎年必ず手に入る植物ではありません。
出会えたら、それはもうご縁。
そんな存在です。
私の選び方|実を求めすぎない、という選択
最後に、これは私自身の感覚ですが。
実もの植物って、「必ず実がならなきゃ」と思うと、少し苦しくなります。
- 葉がきれい
- 佇まいが好き
- 冬の庭に合う
それだけで、もう十分。
実は、ついたらご褒美くらいでいい。
そう思えるようになってから、冬の植物選びが、とても楽になりました。
まとめ|縁起を「飾る」より、暮らしに溶かす
一両〜万両は、縁起ものだけど、それ以上に
冬の静けさを、美しく見せてくれる植物。
気負わず、好きな葉色、好きな雰囲気で選んでみてくださいね。
きっと、あなたの庭やベランダにも、やさしい冬の景色が生まれると思います。

