花屋の仕事は、単に「花を売ること」ではありません。
お客様の心を感じ取り、その想いを花で表現すること。
今回は、私が今でも忘れられない、ある師匠の言葉を紹介します。
それは「お客様の言葉だけで花を選ぶな」という教え。
この言葉が、私の花の見方や、人との向き合い方を変えてくれました。
花屋の仕事は“観察力の仕事”

同じピンクでも、ある人は淡いトーンを、別の人はビビッドな色を思い浮かべているかもしれません。
だからこそ、プロに求められるのは“観察力”。
言葉の裏にある気持ちを感じ取り、相手の世界を見抜く力です。
師匠から教わった“人を見る力”
昔、FLORAさんとは別の近所の花屋でも学んでいたとき、師匠がこう言ってくれました。
「お客様の言葉だけじゃなく、着ている服の雰囲気、色合い、身につけている装飾品、化粧や髪の色──
すべてを情報として読み取り、その人に一番合ったものを提供できるように経験を積みなさい。
もしもプレゼントするなら、プレゼント相手の服装や好きな色などを聞いてみるといい。」
この言葉を聞いた時、私はハッとしました。
花は見ていても、“人を見ていなかった”ことに気づいたのです。
MIHO実は私は特性上、人の顔と名前を覚えるのがとても苦手です。
頑張って覚えても、どうしても頭から抜けていくんです。
そのため、人との接触を極端に避ける“クセ”がついてしまっていて、これまでの人生で人をじっくり観察するということもしてきませんでした。
以来、私はお客様が店に入ってきた瞬間から全身を意識的に観察するようになりました。
服の色、ネイル、持っているバッグ、声のトーン──そのすべてが“心のメッセージ”だからです。
花で伝える「その人らしさ」
今でも意識しないと難しくて、正直なところ、私はまだ発展途上の段階です。
それでも、少しずつ“見る努力”をしています。
道を歩いている人、電車で座っている人、外食のときに出会う人──
意識的にその人の全体を観察する習慣をつけようとしています。
たとえば、全身が同系色で統一されていれば、「きっとこだわりのある個性重視の人なのかも」「もしかしたら縁起を担いでいるのかもしれない」と想像してみたり。
黒系の落ち着いたトーンの服装なら、「目立ちたくはないけれど、自分の世界をしっかり持っている人なのかも」と考えてみたり。
そうやって観察していると、次第に「心理学も勉強してみようかな?」と新しい学びに興味が湧いてきます。
MIHO私はまだ“できている”わけではありません。
でも、意識して見ることを重ねるうちに、いつか“その人らしさ”を花で提案できるようになる気がしています。
きっと、その瞬間こそが本当の意味で「お客様に喜んでもらえる花」を作れる時なんだろうなと思います。
観察力は“愛”を育てる力
観察とは、相手を見張ることではなく、「大切に見る」こと。
花も人も、じっと見ていると小さな変化に気づきます。
「昨日より少し元気がない」「今日は光が当たってる」
その気づきの積み重ねが、“優しさ”を育てる…。
師匠の言葉は、今でも私の中で大切な軸になっています。
まとめ|観察力は感性を育てる種

けれど、それは一朝一夕で身につくものではなく、日々の暮らしの中で“見ること”を意識していく積み重ね。
私自身もまだ発展途上で、観察することの難しさを感じながら、少しずつ「見る力」を育てている途中です。
お客様の服の色、表情、声のトーン──
そのすべてがヒントになり、花の提案に深みを与えてくれる。
観察力は、きっと感性を育てる“種”のようなもの。
焦らず、比べず、気づきを少しずつ増やしていく。
その小さな積み重ねが、やがて“花を通して人を理解する力”に変わっていくのだと思います。
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