真夏の庭…強い日差しに花がぐったりしてしまう季節でも、元気に咲き誇る植物たちがいます。
それが、暑さに強く、夏に見ごろを迎える「真夏咲きの低木」たち。
今回は、ガーデナーである私が実際に育てて「これは夏の庭に欠かせない!」と感じた、おすすめの花が美しい低木5選をご紹介します。
一般的な特徴だけでなく、「育て方の注意点」や「ドライやハーブとしての魅力」も一緒にお伝えしますので、他のブログにはない情報がきっと見つかるはずです。
1. ブッドレア|蝶を誘う香りの噴水

英名:バタフライブッシュ|開花期:6月~9月
長く伸びた花穂がまるで噴水のようにしだれる姿が印象的なブッドレア。
濃い紫・藤色・ブルー・ピンク・白・黄色など多彩な花色を持ち、蝶や蜂が集まる香り豊かな低木です。
ブッドレアは「新枝咲き」の低木で、春に伸びた新しい枝の先に夏から花を咲かせます。
この性質のおかげで、剪定のタイミングを気にしすぎなくてもよく、ガーデニングビギナーさんにも育てやすい植物です。
育てる場所は、1日6時間以上しっかり日が当たる場所を選びましょう。
太陽が大好きなブッドレアは、日光をたっぷり浴びることで花つきもぐんと良くなります。
日本全国どこでも、屋外で地植えにして問題なく育てられる丈夫さも大きな魅力。
水はけの良い土を好みます。
また、過湿を嫌う性質があるため、水のあげすぎには要注意。
肥料は控えめでOKで基本的に、肥料をたくさん与えなくても元気に育つ省エネ植物。
ただし、「もっと大きく育てたい」「たっぷり花を咲かせたい」という場合は、1月〜3月の冬季に緩効性肥料をひとつまみ与えるだけで十分です。
おすすめポイント
- 耐暑性・耐乾性に優れ、夏でも次々と元気な花を楽しめる。
- 香りに誘われて、庭に自然と昆虫たちがやってきます。我が家では、アゲハ蝶が常に飛来している感じ。
- 剪定次第で低くも高くも育てられるフレキシブルな植物。
- 病害虫に強く手間がかかりません。
育てる際の注意点
・成長が早いため、放任すると2〜3mに達することも。春先と花後の剪定が必要。
・株姿が四方八方に広がる感じで成長するため、幅を取る感じです。
・我が家では花が咲き終わるとすぐに「弱剪定」し、脇芽のお花を楽しんだ後「強剪定」して高さを調整しています。
意外な「豆知識」
かつては漢方で「覚明草」と呼ばれ、目の疲れに効果があるとされた記録も。
(※日本では観賞用として育てるのが一般的)
また、ブッドレアの甘い香りは、一日を通して微妙に変化し、実は、夕方~夜にかけて香りが最も強くなる傾向があります。
これは、夕方に活動する「夜行性の蝶や蛾」にアピールするためとも言われており、夏の夕暮れにふわっと香ってくるあの瞬間は、まさに自然からの贈り物のよう。
2. ブッドレア・バタフライキャンディ|小さな庭の救世主
ふっくら感.。.:*
— monmi (@monmi_dayo) June 27, 2025
ブッドレア バタフライキャンディー リトルホワイト♪ pic.twitter.com/IaKn3f1yLQ
開花期:6月~9月|草丈:50〜80cm程度
ブッドレアの中でもコンパクトに仕立てられた新品種「バタフライキャンディ」。
その名の通り、キャンディのように可愛らしいピンクやラベンダーの小さな花穂を咲かせます。
「ブッドレアは素敵だけれど、大きくなりすぎるのがちょっと…」という方に、ぜひ知っていただきたいのがこの「バタフライキャンディ」シリーズです。
ブッドレアの魅力である甘い香り・蝶を呼ぶ花・花色のバリエーションはそのままに、なんと鉢植えでも育てられるほどコンパクトに改良された、まさに願いを叶える花木。
このシリーズは、一般的なブッドレアとは異なり、草丈40cm前後(伸びても80cmほど)ととてもコンパクト。
ベランダ・玄関前・小道沿いなど、限られたスペースでも美しく咲くため、「大きな庭はないけど、季節の花を楽しみたい」という方にもぴったりです。
しかも、ただ小さいだけでなく、花つきも良好で香りも濃厚。
コンパクトながら、咲いたときの見ごたえは十分で、まるで蝶の舞う小さな花畑のような雰囲気に。
従来のブッドレアは広いスペースが必要でしたが、このシリーズなら数株並べても場所を取らないので、「色違いでコレクションしたい!」という方にもぴったり。
ラベンダーやピンクなど、花色のバリエーションも豊富なので、組み合わせて植える楽しみも生まれます。
おすすめポイント
- 鉢植えでも育てやすく、ベランダガーデンにも最適
- 甘い香りで蝶を呼び込む力は健在
- 大きくならないため場所を取らない
育てる際の注意点
・根詰まりしやすいため、1年に1回の植え替え推奨。
・高温多湿が苦手なので、風通しのよい場所を選びましょう。
3. ハニーサックル(スイカズラ)|香りで季節を感じる和洋折衷の花

開花期:5月~8月|つる性~低木状に育成可
夏の庭に甘い香りを届けてくれるツル植物「ハニーサックル(スイカズラ)」は、実はとても育てやすくて、花姿も豊かな万能ガーデンプランツ。
※ロニセラ・セロティナ以外の交配種や園芸品種の中には、花はきれいでも香りがない(またはごくわずか)ものがあります。
日本ではまだあまり見かけないかもしれませんが、実は海外ではクレマチスと並ぶほどポピュラーな存在。
香り・色・咲き方のバリエーションも多彩で、これから人気が高まっていく可能性を秘めています。
ハニーサックルは日当たりのよい場所を好みます。
特に花つきを良くしたいなら、1日を通して光がよく当たる場所を選びましょう。
とはいえ、ある程度の耐陰性もあるので、半日陰でも十分に育てることができます。
「午前中だけ日が当たる」というような環境でも育成可能なので、庭だけでなくベランダや玄関先などでも楽しめます。
また、ツル性の植物のため一度つかまる場所を覚えると、フェンスやラティスなどの細かい構造物には自然と絡みついていきます。
土質はそれほど選びません。市販の草花用培養土やガーデニング用の基本の土で問題ありません。
特に肥料を多く与えなくても元気に育つ植物ですが、最初の植え付け時に元肥(ゆっくり効くタイプ)を入れておくと安心です。
また、春の芽吹きの頃に少量の追肥をしておくと、つるがよく伸び、花もたくさん咲いてくれます。
ハニーサックルは非常に生育旺盛なので、放っておくとつるが徒長して、株元が寂しくなりがちです。
そのため、年に一度の剪定がおすすめ。
- コンパクトに育てたい場合:花が終わったあと、地際から20〜30cm残して強剪定すると、株元から新芽が吹きやすくなります。
- ある程度高さを出したい場合:花後に、つるの半分ほどの長さまで切り戻すことで枝数が増え、翌年の花も豊かになります。
ハニーサックルは「新枝咲き」タイプ。
春に伸びたつるに花をつけるため、秋に伸びすぎたつるは冬のうちに剪定してもOK。
春までに姿を整えておくと、翌年のスタートもスムーズです。
おすすめポイント
- 複色のグラデーション花と甘い香りで夏の癒し空間に
- ナチュラルガーデンやイングリッシュガーデンにもぴったり
- 和名は「忍冬(ニンドウ)」で冬越しもできるほど丈夫
- バラの枝や、樹木に絡んでどんどん上に広がっていきます
育てる際の注意点
・放任すると他の植物に絡みつくことも。しっかりと誘引と剪定を行いましょう。
・多湿にはやや弱いため、梅雨〜盛夏期は蒸れに注意。
・我が家の品種は香りがしないため、品種によっては香りが無いこともあり。
意外な「豆知識」
ハニーサックルは「金銀花」として漢方に使われ、解熱や抗炎症に効果があると言われてきました。
また、日本では「スイカズラ(吸い葛)」という和名で知られています。
この名前の由来には、ちょっと微笑ましいエピソードがあるんですよ。
昔の子どもたちは、スイカズラの花を摘んでそっと口にくわえ、中の蜜を吸って楽しんでいたそうです。
ほんのり甘いその味わいに、思わずにっこりしてしまうような、自然からのちいさなご褒美。
「吸い葛」という呼び名は、まさにその体験から生まれたといわれています。
ただし、ここでひとつ大切な注意を。
ハニーサックルの中には、種類によって毒性を持つものもあります。
昔のように蜜を吸ってみたい…というときは、必ず日本在来の「スイカズラ」であることを確認してからにしましょう。
観賞用として出回っている園芸品種の中には、体に害を及ぼす可能性がある品種もあるため、自己判断での試食は避けるのが安心です。
4. セイヨウニンジンボク(チェストツリー)|涼を呼ぶ青紫の穂花

開花期:6月~8月|草丈:2〜4m(剪定で調整可)
細長い青紫の花穂が風に揺れる姿は、見た目にも涼しげで、真夏の庭にまさにぴったり。
葉はシルバーがかった緑色で、全体的に清涼感のある植物です。
セイヨウニンジンボクは日光が大好きな植物。
午前中に日がよく当たる場所から、1日を通して明るい日なたが理想です。
ただし、冬の乾燥した冷たい風が直接当たらないような、少し守られた場所を選ぶとより安心です。
基本的に自然の降雨だけで十分に育ちますが、夏の高温・乾燥が続く日には、朝や夕方の涼しい時間帯に軽く水やりしてあげると安心です。
とても丈夫な性質ですが、花つきや生育をよくしたい場合は、2〜3月ごろに寒肥(かんぴ)として油かすや緩効性肥料を株元に与えると効果的です。
あくまで補助的な役割なので、与えすぎには注意しましょう。
セイヨウニンジンボクは病気や害虫の被害が非常に少ないため、薬剤などの特別なケアは必要ありません。
この「手のかからなさ」も、多くのガーデナーに支持される理由のひとつです。
セイヨウニンジンボクは、枝数がそれほど多くないうえに、自然と整った樹形になる植物。
そのため、無理に剪定しなくても美しく育ちます。
ただし、よりコンパクトに育てたい方は、2月下旬〜3月頃に軽く剪定をしてみましょう。
おすすめポイント
- 夏の主役にもなる美しい立ち姿
- 香りはほんのりラベンダーのような癒し系
- 実をドライにしてスワッグやリースに使えるのも魅力!
育てる際の注意点
・湿気が多すぎると根腐れを起こしやすいため、水はけの良い土が必要。
・成長スピードが速く、剪定を怠ると2〜3m以上に育つので注意。
・枝もよく広がるため、最低でも直径3mほどのスペースを確保しておくとゆとりを持って育てられます。
意外な「豆知識」
果実(チェストベリー)はヨーロッパでハーブサプリとして親しまれ、女性のホルモンバランスを整える効果があるとされています。
※セイヨウニンジンボクの実は、海外ではハーブサプリメントとしても知られる植物性素材ですが、観賞用として扱う場合は、食用・薬用利用は避けましょう。
花後につくセイヨウニンジンボクの実(チェストベリー)は、秋になるとしっかりと熟してきます。
この実、実はドライ素材としても楽しめるってご存じでしたか?
収穫してしっかり乾燥させれば、落ち着いたグレーがかったブラウン色の粒状の実になります。
その見た目は素朴でナチュラル。実には香りも残っているため、ハーブリースやボタニカルアレンジ、スワッグの素材としても相性抜群です。
5. ムクゲ|夏の空に咲く和の清らかさ

開花期:7月~9月|草丈:1〜3m程度
日本の夏を象徴するような存在、ムクゲ。
「一日花」ながら毎日次々と咲くので、長い期間楽しめます。
ムクゲはたっぷりの日差しが大好きです。
日照が不足すると花つきが悪くなるので、できるだけ日当たりのよい場所に植えましょう。
また、土質にこだわりはありませんが、夏の乾燥が苦手なため、
腐葉土など有機物を含んだ「水もちのよい土壌」が理想です。
水はけが悪すぎても良くありませんので、排水性と保水性のバランスをとるよう意識しましょう。
※成長が早く、大きく育つため、鉢植えよりも地植えがおすすめです。
通常の雨だけで十分育ちますが、夏の間に極端に乾燥するような場合には朝や夕方に水やりを。
乾燥が続くとつぼみが落ちやすくなるため、表土が乾いてきたら控えめに潤す程度がおすすめです。
花つきアップのコツは2回の施肥
- 冬の寒肥:12月〜1月に、有機質肥料(固形の油かすなど)を株元に。
- 夏の追肥:開花が始まる7月〜9月には、緩効性の化成肥料を基本量の1/3程度で少なめに与えると花がよく咲きます。
過剰な施肥は枝ばかり伸びて花が減る原因になるため、控えめがポイントです。
ムクゲは比較的病気に強い花木ですが、害虫には少し注意が必要です。
- ハマキムシ:葉を巻いたようにして食害。春~秋にかけて発生。
- カミキリムシの幼虫:幹の中に入り込んで食害。見つけたら早めに駆除を。
- アブラムシ:新芽やつぼみに発生することも。風通しをよくすることで予防できます。
発見が早ければ被害を最小限に抑えられますので、定期的に様子をチェックしてあげましょう。
ムクゲは「新枝咲き」タイプ。つまり、その年に伸びた枝に花芽をつける性質があります。
だからこそ、春の枝が伸びる前の落葉期に剪定をしても、夏にしっかり花を咲かせることができます。
剪定の基本は…
- 時期:11月〜3月の落葉期
- 方法:徒長した枝や樹形を乱す枝を整えるように剪定
- 枝が伸びた後に切る場合:5月までに済ませれば夏開花に間に合います
萌芽力が強いので、刈り込みにもよく耐えます。
「花数を増やしたい」「コンパクトに育てたい」という方にもおすすめの剪定しやすい花木です。
おすすめポイント
- 和の雰囲気が好きな方にぴったり
- 白、ピンク、紫など優しい色合いが豊富
- 仏花としても使われる、清らかな印象の花
育てる際の注意点
・ムクゲは密に茂りやすいぶん、風通しが悪くなるとアブラムシやハマキムシが発生しやすくなります。
特に梅雨〜夏の高温多湿期は要注意。
・花が一日で落ちるので「枯れた?」と誤解されがち。実際は毎日新しい花が咲いています。
・「丈夫だから」といって日陰に植えると、花がまったく咲かないことがあります。
・根をしっかり張るタイプの低木なので、一度植えたあとの移植は活着しにくく、根を傷めやすいです。
植える前に、周囲のスペース・光の当たり方・風通しなどをしっかりチェックしておきましょう。
意外な「豆知識」
ムクゲは韓国では「国花」としても親しまれており、「不屈」「永遠」といった意味が込められています。
また、ポリフェノールを含むため、地域によっては美容茶として親しまれることも。
また、日本でムクゲは、庭文化が盛んだった江戸時代の武家屋敷でもよく植えられていたと考えられます。
優雅な茶花やお盆の仏花として用いられた歴史があり、「散るはかなし、咲くは美しき」という武士道の感性にも通じる存在だったのかもしれません。
夏の庭を「植物の個性」で楽しもう
草花が元気をなくしがちな真夏でも、これらの低木たちは「暑さに負けず、香りと色彩を届けてくれる」頼れる存在です。
さらに、ドライにしたりハーブ的な視点で楽しんだりと、見た目以上に奥深い魅力があることも、ガーデナーならではの楽しみ方。
植物の背景を知り、手をかけて育てることで、庭はただの風景から、「物語のある空間」に変わっていきます。
あとがき|真夏でも心が潤う庭を
「夏に花が少ない…」と感じていた頃、私もガーデニングの手が止まりがちでした。
でも、今回ご紹介した低木たちと出会ってから、真夏の庭がまた好きになれた気がします。
花は、咲くだけで人の心を動かします。
暑い日も、そっと咲いている姿を見ていると、ふっと優しい気持ちになれるから不思議ですね。
あなたの庭にも、そんな小さな「夏の主役」を迎えてみませんか?




